つくり手であり、呑み手であることを大切に。
継承と挑戦を重ねる阿蘇の酒

 阿蘇五岳と南外輪山に囲まれた高森町。冬場になると氷点下の日が続く寒冷地ですが、蔵の真ん中で地下深くから湧き出す仕込み水は年中ほぼ同じ温度を保ちます。酒造りには絶好の条件が揃う土地といえるでしょう。宝暦12(1762)年に生まれた「山村酒造」は阿蘇外輪山の伏流水と阿蘇の米を使い、阿蘇の人の手で“阿蘇の酒”を造る蔵です。
 仕込みの時期。「釜屋」と書かれた蔵のなかは、もうもうと立ちのぼる湯気に包まれます。床に埋め込まれた和釜の蒸気で蒸し上げ、放冷した蒸米は麻布に包んで、白壁土蔵の「萬延蔵」へ。蔵子たちは柿渋で黒光りするまで磨き上げられた階段を駆け上がり、麹室へと急ぎます。
 「萬延蔵」の1階にはたくさんの巨大なタンクが並びます。れいざんは三段仕込み。夜を通して見守るお酒は4週間ほどの発酵期間を経て、ようやく上槽(しぼり)の工程へたどり着きます。火入れせず、生のまま瓶詰めした若々しいしぼりたての原酒はアルコール度数19度。冬限定の商品として販売されています。
 阿蘇の地域の人たちの間で愛されているのは「霊山」や「れいざん」と書かれた一升瓶タイプ。賑やかにお酒を楽しむ人の輪が、お眼に浮かぶようです。「子どもの頃、造りの時期になると蔵子の部屋へ「おやすみなさい」とあいさつに行くのが日課で、楽しそうにお酒を酌み交わす様子がまぶしかった」と語る山村弥太郎さん。山村さんにとってお酒は喜びの輪をつくるもの。吟醸酒ブームによって多くの酒蔵が香り高さを極めていくなかでも、伝統の味わいは変わりません。「インパクトよりも料理を美味しく味わうすっきりとした飲み口を大切にしています。2時間飲み続けても飲み飽きないのがれいざんの持ち味です」。そこには、つくり手であり、呑み手であることを大切にする山村さんの思いがありました。

山村酒造合名会社

〒869-1602 熊本県阿蘇郡高森町高森1645 
TEL 0967-62-0001 FAX 0967-62-1820
http://shop.reizan.com

創業/1762(宝暦12)年
代表者名/山村唯夫

【主な使用原料】
米:華錦、山田錦、神力など 酵母:熊本酵母ほか 水:湧水100%

【主な受賞歴】
独立行政法人酒類総合研究所主催 全国新酒鑑評会・入賞/熊本国税局主催 新酒鑑評会入賞/酒文化研究所主催 日本酒チャンピオンズカップゴールドメダルなど

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